Doctor of Ministry(D.Min.)の課程

■D.Min.の目的

D.Min.は、神学的・実践的基盤としてのMaster of Divinity(M.Div.)をもった牧師が、一定年数(5年)以上の経験を経た後、教会の牧会の現場において研鑽を続けることが可能なプログラムです。神学教育の専門分野での専門家となるためのMaster of Theology(Th.M.)やDoctor of Theology(Th.D.)が神学的研鑽に焦点を当てるのにたいして、D.Min.では地域教会の牧会および伝道、その他宣教に関する諸分野におけるそれぞれの経験から導き出された実践的課題への学際的取り組みがなされます。こうした、牧会学の領域における特定の課題と取り組む上で、聖書的基盤に立ちつつ、個人的および共同体的実践経験と学問的研鑽を体系的に問う課程と機会を提供します。そして、それらがより高度な専門的成果としてまとめられ、牧会学での研鑽を論文によって発表されることで、アジアにおける日本の教会に仕えることを目指しています。

■D.Min.の特徴

1.  実際の牧会経験と学問的考察との有機的関係

本校におけるDoctor of Ministry(D.Min.)は、Master of Divinity(M.Div.)課程で受けた教育をさらに深め、実際的領域に光を当てることを目標としています。M.Div.課程の教育目標は、牧会を始めるための準備です。それゆえ、牧会者として整えられるための基本的な理念は、M.Div.においてもD.Min.においても変わっていません。しかし、そのレベルおよび研究成果の質を異にしています。したがって、D.Min.は、以下の三点を目指します。

  • 聖書神学、歴史神学、組織神学、実践神学の領域とそれぞれの経験とのかかわりにおいて牧会の働きを理解し、統合すること。
  • 牧会の業に携わりながら、牧会の神学的・実践的学びを深め、実践における正しい判断力を養うこと。
  • 牧会上の適切な方法を見いだし、牧会上本質的と考えられる働きにおいて実際にそれを機能させていく能力を啓発すること。

2. アジアのコンテキストの中での神学的営み

AGST/Jはその名称が示すようにアジアというコンテキストを重視します。それは、アジアそして日本における宣教という実践的コンテキストを場として神学的な作業がなされることを意図しています。さらに、特定の地域との関連での神学的作業を超え、従来の神学がはぐくまれてきた欧米的枠組みとは異なる新たな枠組みで取り組むことをも意味します。

こうした研究が、各々研究者の牧会や宣教の実践を踏まえつつも、聖書神学的洞察を深め、体系的に反省し、全キリスト教の活動のなかで位置付けられることを目指します。アジア全体の宣教と教会協力の中で日本のキリスト教会を捉えなおすための視点を身につけ、それぞれの研究が個人の業績に留まらず、広くキリスト教界全体へ貢献しうるように、援助します。

■受験者に求められる資質

D.Min.プログラムでは、実際的な働きの中で課題と取り組む以下の能力が求められます。

  • 牧会的領域における重要な課題を特定し、その課題を研究するにあたって、必要かつ適切な資料を見出し批判的に用いる能力
  • 牧会の働きにおける実践的課題を、深い神学的洞察をもって捉え議論する能力
  • 課題と取り組む上で、新たな視点やアプローチを学び、それを実際的に課題に適応しつつ自らの研究を自発的に遂行してゆく能力

以上のような、個人的資質に加え、コースワークなどでは、お互いからも学びあう姿勢が実践的課題と取り組む上で不可欠です。さらに、牧会する教会や所属教団の理解を受けていることが、学びと研究を継続するために必要となります。

■入学条件

志願者は、以下の条件を満たしていることが求められています。

  1. ATAまたは他の学位認定機関によって認定された神学教育機関からのM.Div.あるいは同等の学位を有し、その成績は平均B以上であること。(平均B以下の者は仮入学として受け入れられ、入学後、所定の試験を受けて正規の学生と認められることもあります。)
  2. 少なくとも5年間の牧会経験、または同等の経験を積み、その働きについて良い評価を得ていること。
  3. 神学的研鑽が可能となる十分な語学能力。
  • 聖書言語(ヘブル語、ギリシャ語)の知識を有する必要があります。D.Min.課程への入学を許可された時点から1年以内に聖書言語の試験を受けることになっています。
    ※各研修センターにおいて持たれる聖書語学研修コースの履修をもって筆記試験に代えることもできます。
  • 英語の能力を有していなければなりません。入学試験に際して、この点についての確認を行います。
  • 日本語を母国語としない場合は、日本語で学ぶ能力を有することが求められます。

※M.Div.あるいは同等の学位を持たない者には、以下の点を考慮して入学を許可することがあります。

  • B.Th.を取得後、M.A.またはM.Div.の単位取得が可能な神学校等において2年の課程を正規に修了した者。
  • 最低10年の牧会経験・教職歴のある者。

以上の条件を満たす者で、条件付入学を許された場合は、M.Div.相当のレベルに達するために必要な単位が取得されたのち、正規の学生と認められます。

■入学試験

各研修センターの試験委員会は、書類審査、試験、面接を実施します。また、試験委員会の報告を受けて、合否の決定はAGST/J教授会でなされ、運営理事会に報告されます。願書を提出した志願者の試験は、以下のように実施されます。

  1. 願書一式の書類審査の後に、試験日および審査論文の締め切り日などが各研修センターの試験委員会において決められます。
  2. 志願者は、試験委員会が定める実践神学分野のテーマ(2題中1題選択)に関する8000字程度の論文を、定められた日までに提出いたします。
  3. 志願者は、試験日に、神学的基礎知識および英語に関するテストと面接を受けます。
    (申し出によって同日、聖書言語のテストを受けることも可能です)。

■提出書類

受験手続志願者は、以下の書類を提出して下さい。

  1. 入学願書(本書末ページに掲載。A4用紙にコピーしてご利用ください)
  2. 大学および神学校からの卒業証明書および成績証明書各1通
  3. 写真3枚(3cm×4cm)
  4. 推薦状2通(1通は以前に学んだ神学校の教師からのもの。1通は所属教団の上司<監督、教団議長など>からのもの)
  5. 出願料5千円、受験料2万円
    振込み先:郵便振替 01100-3-65161「アジア神学大学院日本校」
  6. 健康診断書

■学習課程

D.Min.の学習は、神学全般の基礎となる学びを経て、実際的な課題へと展開しつつ、自らの研究課題に向けて絞ってまいります。

  • 神学全般に関する基礎的学び
    旧約学、新約学、組織神学、歴史神学(以上の領域においては、実践的視野に立って学習がなされます)。
  • 実践的研究へのコンテキスト研究
    宗教学、宗教社会学、アジアの宗教、日本の宗教・文化、宣教学など。
  • 教会の実践的課題や諸問題の研究
    牧会学、伝道学、説教学、礼拝学、牧会カウンセリング、教会管理、その他、教授会が認めた分野の中で、自らが選んだ特定の研究課題に絞った学習がなされ、論文として発表いたします。

■卒業の条件

D.Min.の卒業に必要な条件は以下のとおりです。

学習時間

  • 2学期制の場合は24単位(3学期制の場合は36単位)の取得が求められています。その内4単位(3学期制では6単位)は論文執筆となっています。
  • 20単位(3学期制の場合は30単位)の学習は、各研修センターの担当教授と相談しつつ、講義、ゼミ、個別指導によって取得します。
  • M.Div.レベルの科目に一定の課題を付加することによって最大10単位(3学期制の場合15単位)まで卒業単位に加算できます。

●転入学/単位のトランスファーについて

他の神学高等教育機関で履修した単位のトランスファーの申請は、主任教授および教務主任の承認のもと、6単位(3学期制では9単位)まで可能です。

●総合修了試驗

学生には、学習課程を終えた後、指導担当教師が実施する総合修了試験が課せられます。その結果は、主査、副査、教務主任によって評価されます。この総合試験に合格しなかった場合は、必要な手続きを経た上で、再試験を実施することができます。

●D.Min.認定論文

  • 論文の長さは、日本語の場合、本校規定の書式(40字×25行)に従って本文が4万字程度となっています(A4用紙に40枚前後、本文以外の目次、註、参考文献などを含めると、50枚前後となります)。
  • 論文の内容は、アジアおよび日本という宣教現場とそこにおける実践的方向付けが明確になされていることが求められます。
  • 論文の書式は、論文作成規定に沿って下さい。
  • 論文の言語は、日本語または英語を原則とします。また、論文には、日本語の2頁程度の要約および1500語程度の英文要約を付加して下さい。
  • 論文は、口述試験予定日の少なくとも3ヶ月前までに教授会によって選ばれる2人の審査員によって審査されます。
  • 学生は論文執筆後、その論文についての面接試験を受けます。

●評価

スクロールできます
A優秀(100~90)
B良(89~80)
C可(79~70)
D不可(69以下)

評価点は、コース学習、総合試験、博士論文のすべてにおいて平均B以上であることが求められます。すべての評価点は、日本校事務局によって保存されます。

●在籍期限

時間的制限それぞれの学生は、最初のコースを受講し始めてから5年が期限となっております。ただし、本人の申請にもとづき、最大で3年の延長が教授会によって認められる場合があります。

●学位の認定

学生がD.Min.プログラムの修業条件を満たしたことを課程主任が認めた場合、その内容を教授会で審議し、その結果を運営理事会に報告します。D.Min.学位記は、AGSTの名によって授与され、認定証には、学生が所属する研修センターの名称が明記されます。